ここまでは、不妊に対して鍼灸治療がどのような立場でサポートできるのかを書いていきましたが、はたして鍼灸治療は本当に不妊治療に効果を発揮するのでしょうか？

調べてみると鍼灸が不妊治療において効果的であるという記事がたくさん見つかりましたが、その中の一例を紹介いたします。

・２００２年、ドイツで、体外受精を行う際に鍼灸を利用した場合、しなかった場合と比べて妊娠率が有意に高くなるという研究結果が発表されました。
鍼灸治療を行わなかった時の２６．３％の成功率に対して、鍼灸治療を行った時は４２．５％の成功率を上げることが出来たのです。
実に6割以上の比率で成功率がアップしたと報告されました。

・不妊専門機関で二年治療しても妊娠しない不妊症患者で、体外受精など高度な生殖医療を3回以上受けても妊娠できず、
子宮の内膜が薄いことが原因と推定される57人（平均年齢34.7歳）が対象。

患者たちに鍼灸治療を半年以上続けたところ、31人の内膜が厚さ6ミリ以上など妊娠への一定基準に改善。
うち14人（同33.7歳）が、冷凍保存した自分の胚を移植して妊娠することができた。
このほか、不妊の原因が分からず、月経異常や頭痛、肩こりなど、
健康に問題がないのに感じる体の不調がみられる患者24人（同35.2歳）への鍼灸治療でも、7人（同36.1歳）が妊娠した。

このようなデータからも分かるように不妊治療においても鍼灸治療は効果的であることが分かります。

鍼灸が不妊治療に効果的であることが分かったところで、具体的に当院で行っている妊娠しやすい身体つくりについてご紹介いたします。
当院ではおもに４つの側面から働きかける施術を行っています。

①骨盤内の環境を整えます

骨盤を構成する仙骨と左右の寛骨の中には子宮、卵巣をはじめとする重要な臓器が収まっていますが、この骨盤の中の環境を整えることは妊娠しやすい身体を作るうえで非常に重要なことです。

具体的には、手足にあるツボに鍼をして、骨盤内の血流を促しさらにお腹の緊張を解き内臓の機能を高めていきます。

②自律神経系・内分泌系の調整

鍼灸治療には、自律神経の乱れや全身の血流を改善することはこれまでの研究により証明されています。

まず、自律神経が整うことでホルモンバランスが改善されていきます。さらに、ホルモンバランスの乱れが改善されることによって、子宮や卵巣の活動しやすい環境が整っていきます。

また鍼灸治療はリラックス効果やストレス解消効果もありますから、精神的な問題でホルモンバランスが乱れてしまっている人にもぴったりの治療法です。

③温熱効果で体質改善

冷えを訴える女性はとても増えていますが、妊娠しやすい身体つくりにおいて冷えがタブーであることはあまり知られていません。

身体は冷えると命に係わる臓器を守ることを最優先して、手足に流れる血液の量を抑えてカラダの中心に集めようとします。 手足が冷えるのは、このカラダのメカニズムによるのです。

一方、子宮や卵巣は、この生命維持の臓器に比べ優先順位が低いために、カラダの冷えはそのまま子宮や卵巣にも及び血のめぐりが低下します。

その結果、本来元気な卵子を育てるためにたくさんの血液を集め、常にポカポカの状況であるべき子宮や卵巣にその機能を維持するホルモンも届かなくなるため、冷えは禁物なのです。

このようなことから妊娠しやすい身体つくりにおいて、冷えを改善する生活をめざす「温活」が大切なのです。

④栄養指導

妊娠しやすい身体をつくるうえで普段の食事も大切な要素の一つです。

日本人女性の多くが栄養不足と言われていますが、栄養は妊活の基本です。栄養不足の体に、赤ちゃんは安心してやってくることができません。

身体に取り入れる食べ物こそが、細胞のひとつひとつを作る材料であり、母子の命を維持し、育てるエネルギーとなります。

当院では、妊娠しやすい食事、栄養のアドバイスをさせていただいております。

妊娠しやすい身体つくりにとって冷えは大敵というのが一般的になってきています。

身体が冷えると、子宮や卵巣に十分な血液を届けられなくなり、その機能が低下してしまいます。

身体を常に温めておき、妊娠しやすい体調を保つことが大切です。

当院ではその為の冷えを解消するセルフケアとして妊娠しやすい身体つくりに有効なツボをお伝えしています。

命門
カラダを芯から温めたいなら「命門（メイモン）のツボ」がカギになります。特に下半身に効果があり、足がダルさやむくみなどにも効果的なツボです。

“命の門”と書くことからも、とても重要なツボであることが伝わってきますよね。また漢方では、全身を温める炎の種火を「命門の火」といいます。命門のツボを熱で温めることにより種火の勢いが増し、全身を温めやすくするのです。

命門の探し方・・・おへその真うらにあたる部分で、腰椎の2番と3番の間にあります。

三陰交
三陰交は、子宮に直接働きかけて血液の循環をよくする、女性にとって大切なツボの一つです。

東洋医学では体の中を「気・血・水」がめぐっていると考えますが、その巡る道筋の3つが交わるところ、それが三陰交の名前の由来でもあります。「気・血・水」が3本の道をめぐれば内臓の働きがよくなり、まさに体の内側から美しくなるのです。

三陰交の探し方・・・
内くるぶしの一番高いところから指4本のところの骨際にあり、押すと痛いところです。

これらのツボにお灸やシール鍼などをして身体の冷えを解消しましょう、またツボは人によって多少のズレがあるので、広い範囲で探してみましょう。

冬場などは下腹部に直接的にカイロなどを貼っておくのもいいですが、温めすぎにも注意してください。

他にも食事や栄養のことなども含め施術の際にお伝えさせていただきます。

当院では、『心と身体を健やかに保ち、妊娠しやすい環境をつくること』これが不妊治療の目的だと考えています。

心と体は密接に関わりあっていることは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか？

妊娠しやすい身体つくりを考えるうえで、身体に備わっているさまざまな機能を整えることは確かに大切です。

生理不順や生理痛を治すことはもちろん、冷えや肩こりなどもしっかり治療する必要があります。他にもご本人の自覚症状がなくても、妊娠に必要な機能を高めることも重要です。

しかしそれだけでは大切なことが抜け落ちています。

東洋医学の基本的な姿勢の一つに“心身一如”という考え方があります。

これは現代医学の“精神・身体二元論”に対し、東洋医学では、精神と身体は相互に関連しているものと捉えています。

“心”つまりさまざまな精神活動や感情は、内臓や他の機能と密接に関連して営まれているという考え方なのです。

高度不妊治療と呼ばれる体外受精や顕微授精などの生殖補助医療がどんどん発達しているにも関わらず、近年、日本で不妊に悩む人は、減少するどころか増えているとさえいわれています。

不妊治療に絶対はありません。妊娠することはとても複雑でどこか神秘的なものです。科学やデータ、理屈では説明つかないこともたくさんあります。

不妊に悩む患者さんからからは、自分自身の焦りや周りからのプレッシャー、不妊治療そのものによるストレスなどのお悩みもよく寄せられます。

当院では、そんな患者さんの気持ちに寄り添うことを何よりも大切なこととして心がけております。妊娠を望むあなたのサポートができれば幸いです。